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東洋医学から学ぶ 動悸の改善と漢方
動悸と漢方
動悸とは胸がドキドキすることです。
心臓の拍動を自覚すると不安感に襲われますが、驚きや不安などでおこる一時的な動悸はそれほど心配をすることはありませんが、痛みを伴うときは緊急を要する病気のこともあります。
狭心症や心不全といった病気も視野に入れて対処しましょう。
漢方薬が効果的な動悸とは
漢方は、未病を治すといった点に重きを置いた予防医学が得意分野といえます。
自律神経失調症やパニック障害からくる動悸や更年期障害などが引き金で起こる動悸は、その人の体質や性格、年齢や体力などから生薬を選びオリジナルの漢方薬を提供することで改善できます。
しかし、急性の症状や外科的処置は、専門の病院を受診する必要があります。
漢方では動悸を「心悸(しんき)」といいます
驚き、恐れ、不安、情緒の変動、疲労などがきっかけとなり生じる一時的な軽症のものを「驚悸(きょうき)」といいます。
外因が明らかでなく、持続する動悸や体を動かしていると強まる重症のものを「怔忡(せいちゅう)」といいます。
漢方では動悸の原因が正気(エネルギー)の不足といったとらえ方をします。
漢方での動悸の治療としては、体内の気を増やして全身を巡らせるとともに血の流れを整えます。
循環器系疾患以外で起きる動悸は、虚弱体質や老化などと関係があると考えられていますが、「気、血、水」の流れをよくすれば生まれつき体が弱い人も老人も大病をまぬかれることができます。
漢方でいう「気、血、水」は現代医学の「神経、免疫、内分泌」のことです。
正気(エネルギー)の不足は、血のめぐりを悪くするため拍動が強まり動悸の症状となってあらわれます。
漢方薬で動悸を治す
・虔脩感應丸(けんしゅうかんのうがん)
虔脩感應丸は虚弱で、めまいや悪寒、発熱などを起こしやすいい体質をいいます。この漢方薬は、動悸、息切れ気つけ、消化不良などに効果があります。
虔脩感應丸に含まれる成分のうち、牛黄(ごおう)と麝香(じゃこう)は、「気」や「血」の通り道となる経絡や、神経などの循環を良くします。
牛黄は牛の胆石のことで、鎮静、利胆、解熱作用などがあります。
麝香は、ジャコウジカのオスの分泌物を乾燥したもので、気血を巡らせる作用があります。
生薬は麝香(じゃこう)、牛黄(ごおう)、人参(にんじん)、莪朮(がじゅつツ)、沈香(じんこう)さふらんなどです。
・天王補心丸(てんのうほしんがん)
天王補心丸は、体質虚弱な人の、動悸、息切れ、不眠、不安感などの症状に効果があります。
現代人の多くが不眠に悩まされているようですが、不眠が続くと不安感から動悸や息切れなどが起こることがあります。
生薬は地黄(じおう)、当帰(とうき)、麦門冬(ばくもんとう)遠志(おんじ)桔梗根(ききょう)、茯苓(ぶくりょう)酸棗仁(さんそうにん)天門冬(てんもんとう)柏子仁(はくしにん)丹参(たんじん)党参(とうじん)などです。
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
苓桂朮甘湯は水毒によっておこる症状の治療に用います。
漢方では、胃に過剰な水分が滞っていたり、尿量が少ない症状を水毒といいますが、この水毒が動悸や息切れの原因となってしまいます。
苓桂朮甘湯はその他にも頭痛、ふらつき、めまいなどもにも効きます。
生薬は茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)などです。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は精神的な不安から起きる動悸や不眠などに効果があります。
生薬は、柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、黄金(おうごん)大棗(たいそう)人参(にんじん)竜骨(りゅうこつ)、牡蠣(ぼれい)、大黄(だいおう)生姜(しょうきょう)などです。
漢方薬は保険がきくの?
最近では漢方薬と西洋薬を併用する病院も増えてきましたが、148処方の漢方製剤が保険適用されています。
一般の医療機関では主にエキス製剤が処方されていますが、専門の漢方医がいる病院ではエキス剤だけでなく煎じ薬が処方されることもあります。
「漢方薬は保険がきかないので高額請求がきそう」と漢方専門の医院を敷居が高いと敬遠する人もいるようですが、市販の漢方薬ではフォローできない細かい部分も診てもらえ、適切な漢方薬が処方してもらえます。
・漢方薬に副作用はないの?
全く副作用がないとは言い切れませんが、西洋薬に比べると少ないといえます。
一般的な副作用としては、じんましん、むくみ、動悸、下痢、腹痛などです。
漢方薬を選ぶ際には、自己判断で選ばないことも大事です。
漢方薬を複数飲むことで一部の成分が過剰摂取となり副作用がおこる場合もあります。
まとめ
動悸が急に始まると、「このまま心臓が止まってしまうのではないか」と不安になってしまいますが、ほとんどが一時的なものなので必要以上に心配することはないようです。
しかし、痛みを伴うときは狭心症や心不全の前ぶれかも知れないので、急いで専門の病院で受診しましょう。